第8章 視えない悪夢
現実で禪院直哉を見るたび、夢の中の自分の声が頭の中で響くのだ。
そして彼に対する呪いのような執着の感情が全身を蝕む。
不愉快なその感覚に顔を歪めることもしないで、椿はいつも仮面のような表情で直哉を見る。
「珍しゅう今日は一人なんやな。」
直哉はいつも椿の側にいる、昴が見当たらないので、機嫌が良さそうに口角を上げた。
「…今日はどうしたの?」
この男が目の前に現れる時はいつも突然だ。
どこに居てもフラッと椿の前に現れる。
監視でもされているのだろうか、別にいいけど。
自分も直哉を監視しているから。
直哉は椿の隣に座ると、顔を近付け覗き込んだ。
「悟くんがあんだけキレとったさかい、あの後どないなったんか気になっとってん。」
そう言って、直哉は膝に置いてある椿の手を握った。
「大丈夫やったんか?」
椿は直哉の顔をジッと見た。
心配そうな声の中にも、自分に対する邪な劣情が隠れていない。