第8章 視えない悪夢
『私を残酷な未来から救うために悪夢を見せているのか。』
『私の科に罰を与えるために悪夢を見せているのか。』
椿は分からなかった。
だから椿は、昴を教会には連れて来れない。
もしアレが、私に与えられた罰ならば、それに抗おうと昴の命を救ったことを主は許さないだろうから。
だから、今でも罰を与え続けているのだろうか。
「禁欲的な格好が、余計そそるやないか。」
毎夜毎夜聞かされる声が、静かな礼拝堂に響いた。
椿はうんざりするようなその声に、ゆっくりと目を開けた。
夕焼けに染まったステンドガラスに反射された禪院直哉は、椿の心をかき乱すような笑みを浮かべている。
これが昴を助けた報いなのだろうか。
この男は、椿への私欲を抱いたままだ。
直哉の手が、椿が座っている長椅子の背もたれに触れた。
近付く直哉から、嗅ぎ慣れた彼の匂いがする。
毎夜、追い求めている彼の匂いだった。