第8章 視えない悪夢
夕陽に染まる教会は、穏やかな鐘の音を街へ響かせていた。
色づいたステンドグラスから柔らかな光が礼拝堂へ差し込み、静かな祈りの時間を包み込んでいる。
夕陽を浴びた白いマリア像は、柔らかな茜色に染まり、訪れる者を優しく見守るように静かに佇んでいた。
黒の長袖ワンピースに身を包み、頭には黒いレースのベールを纏った椿は、胸元で手を組み、目を伏せて俯いている。
祈りを捧げるその姿は、禁欲的な信徒の姿でも、ベールではその美貌は隠れていない。
しかし、その祈りは本物なのだろうか。
否。
『なぜ私にあのような悪夢を与えるのですか?』
椿は15年間、ずっとマリア像に問い続けていた。
しかし、漫画のように高潔なマリア像が答えをくれることは無かった。
学生の頃から椿は礼拝堂に現れては、毎日毎日、自らの思想を整理するようにマリア像に問いかける。
『アレ』は私の未来なのだろうか。
なら何故、私は自分の悲惨な未来を知らなければいけないのだろうか。