第8章 視えない悪夢
「… 椿さんは、教会に行く時は、俺を連れていきません。」
どこへ行くのも、いつも自分を連れ回していた。
だけどあの人は、教会だけは俺を連れてはいかない。
何か意図はあるのか。
その理由を聞いたことも無かった。
「…そんなに信仰心が強いなら、婚前性交はよくなかったかな。」
「…………。」
主君の恋愛事情なんて知りたくなかった。
昴は感情を殺したように悟を見てから、結局気になっていたことを聞いた。
「…昨夜はなにもなかったんですか?」
椿と一晩一緒にいて、あの姿を見ることはなかったのだろか。
椿の性格からして、悟に自分の無様な姿を見せるのは、死ぬほど屈辱的だろう。
だけど今日見ていて、椿はそんな感じには見えなかった。
「…何も無かったよ。帳を下ろして六眼で確認しても、呪霊なんて視えなかった。」
悟の言葉を聞いた時に、昴は意図せず安堵の息を吐いてしまった。
その昴の一瞬の緩みに、悟は目ざとく気がつく。
どうやら昴は、自分が呪霊を見過ごしていたわけでは無かったと安堵したのだろう。