第8章 視えない悪夢
「椿がお前を置いて出掛けた?」
椿が出掛けてしばらくして、悟が再び伊集院家に現れた。
この屋敷で悟をこんなに見かけることになるなんて思いもしなかった昴は、なぜ今悟がここにいるのかが理解出来ていない。
本当に椿に会いに来たというのだろうか。
あの『五条悟』が。
散々椿を煙たがっていた男が、今さら婚約者みたいに振る舞うのが不思議でしょうがない。
「どこに行ったのかくらい分かるんだろ?」
当然、昴が知っているだろうと決めつけて、悟は腕組みしながら首を少し傾けて、昴に答えを促す。
「椿さんなら、自分が寄付している母校の教会に行っていますよ。」
「教会?」
『教会』と聞いて、さらに不可解に首を傾げる悟に、昴はいつもの無表情で彼を見た。
本当に椿のことに興味が無かったのだろう。
彼女のことを何も知らないことが、その言動で分かった。
「椿さんは、初等部から大学までカトリックの学校に通っていて、以前から寄付をしていた教会の建て直しが終わったので行かれたのでしょう。」