第8章 視えない悪夢
椿はその事実を、ゆっくりと実感していった。
今まで夢を見ない日はあった。
だけど夢を見て、殺されることなく目を覚ましたのは、あの悪夢の日からおよそ15年ぶりの事だった。
その事実が現実味を帯びると、椿は目頭が熱くなるのが分かった。
大きな感動に肩を振るわせている椿に、悟は心配になってその肩を掴もうとした。
「!」
椿は腕を伸ばして、悟の手よりも先に彼の首に自分の腕を巻き付けた。
「っ悟。」
ぎゅっと椿に抱かれて、耳元で聞こえた椿の声は、少し涙声のように思えた。
悟は訳が分からなかったが、椿が機嫌が良いことだけは分かった。
「え?椿?」
椿からこんな風に抱き締められたことが無かったので、悟は少し困惑して椿の名前を呼んだ。
椿はさらに悟の顔を両手で包むと、なんと彼女から悟にキスをした。
え?
なんのご褒美?