第8章 視えない悪夢
悟は顔にかかった髪の毛を、そっと彼女の耳にかけた。
自分の胸の中に顔を埋めて、無防備に眠る椿の顔をジッと見た。
長いまつ毛が少しだけ揺れて、昔から知っている綺麗な顔が少しだけ歪んだ。
ゆっくり瞼が開いて、椿は数回瞬きをすると、顔を上げて悟を見上げた。
「……もっと寝てていいよ。」
浅い眠りから覚めきっていない椿の瞳を見て悟は言った。
椿は心地よい声を聞いて、また瞼を閉じかけた。
しかし、何かに気が付いたかのように、急に大きな目を見開いた。
そして再び悟の顔を見ると、両手で彼の頬を挟んだ。
「……悟…。これ夢じゃない?」
椿は驚いたように悟を見ながら確認するように聞いてきた。
悟は答える代わりに首を傾けると、ちゅっと椿の唇に軽いキスをした。
気持ちの良い感触が唇に触れると、椿はようやくこれが現実だと気が付いた。
目が覚めた。
あの世界の夢を見たはずなのに、呪霊に殺されることなく目が覚めた。