第8章 視えない悪夢
悟を一切受け入れる気のない椿の言葉に、悟の目がほんの少し歪んだ。
悪夢の中の椿は、そんな悟の変化にも気付かずに、彼を煩わしそうに睨んでいた。
夢の中の椿は、直哉しかみえていないから。
頭の中では、現実でも見たことのない悟の顔に戸惑っていた。
(何故そんな顔をしているのだろう。)
私達はこんな風に会話をするのも十数年の付き合いでも数える程度だ。
直哉との噂を聞いているのだろうか。
愛に狂った馬鹿な令嬢が、もうすぐその生家からも絶縁されると知ったのだろうか。
だからあなたはそんな目で私を見ているの?
『椿は僕の顔しか知らないからね。』
急に悟の言葉を思い出した。
いいえ悟。
私知ってるの。
あなたがどんな人か。
何か五条家の弱みでも見つけるつもりで始めた事だった。
素行調査を入れたあなたは、私には理解できない男だった。