第7章 慕情
普段彼から香る匂いがふと自分を包むと、なんだか気分が落ち着かなかった。
悟はそんな椿をまた抱き上げる。
「ねぇ、自分で歩けるわよ。」
「無駄な体力使わせたくないんだよ。」
そう言ってスタスタと廊下を歩くと、またあの薄暗い部屋の入口が見えてきた。
帳を当たり前のように抜けると、先程暴れて散らばっていた部屋が、綺麗に片付けられていた。
使用人が片付けた部屋を数歩で横切ると、すぐに椿をベッドに下ろした。
悟は椿をベッドに座らせると、用意してあるサンドイッチを手にとって、椿の口元に持っていった。
前にこうして食べさせていた唇は今度は開かなかった。
「…先に話をしましょう。」
「話すよりこっち。椿が食べなきゃ何も話したくない。」
「……………。」
椿は悟からサンドイッチを取ると、自分で食べ始める。
少し前に悟の手から食べていた唇をジッと見る。
あの時の椿が可愛くて、同じようにまた食べさせたかったと言ったら、椿は呆れた顔を見せるだろう。