第7章 慕情
椿は湯船のお湯を掬うと、そのまま頭から被った。
……悟の前で眠る訳にはいかない。
眠ってしまったら、あの狂った姿を見せてしまうから。
そして見られてしまったら、この結婚話は無くなるだろう。
無くなるならまだ良い。
精神疾患のある嫁を五条家が『引き受けた』形になれば、また悪夢のように搾取されるだけの人生だ。
何よりも…。
あの姿を見せてしまって。
あの綺麗な六眼に自分がどう映るのかが怖かった……。
「早かったね。もっとゆっくりしてもいいのに。」
「…………。」
浴室を出ると、壁に寄りかかりながら腕を組んでいた悟が、顔を上げた。
悟はバスタオルを椿に被せると、丁寧に水気を拭きだした。
「…自分でやるからいい…。」
そう言った椿が悟からバスタオルを取ったのを見て、新しい服を用意する。
「…なんであなたの服ばかりなの?」
渡された服はティシャツで、今回ももちろん下着の用意もない。