第7章 慕情
ベッド一つ。
その言葉に椿はギクリとした。
一緒に寝ると言うことは、あの病気がバレてしまう。
動揺して、目を左右させる椿を見下ろしていた悟は、とぼけたように聞いた。
「まさか、一緒に住むなんて考えてなかったわけじゃないよな?」
実はそうだった。
椿は婚姻後の居住先を五条家本家と決めていた。
悟は高専の仕事があるから、東京に居るだろうし、今までも椿が呼ばなければ会いに来なかったような男だ。
結婚しても彼は東京で自由に生活して、子供が必要な時に枕を交わすくらいだと思っていた。
五条家に居れば、悟の側に居なくても、禪院家から守って貰える。
25歳を無事に迎えるまで。
「…………。」
悟は予想外の出来事が起きたように、黙って考え込んでいる椿を見下ろした。
この小さな頭で、何やら色々と打算を考えているのが滑稽で可愛くみえる。
自分をあくまで計画の駒としてしか見ていない現実には腹立たしいが、悟の言葉で右往左往する椿を見るのは気分が良かった。