第7章 慕情
悟は黙って不満げに見てくる椿の頬を人差し指で撫でた。
ジンワリと汗をかいていて、顔に張り付いた髪の毛を耳にかけると、そのまま小さな椿の頭を手のひらの中におさめる。
顰めた目の下に、赤く潤んでいる唇に目がいくと、その唇に食らいつきたくなる衝動を抑えた。
衝動のままに唇を合わせ、気が済むまで舌を絡めていたら、椿の答えはいつまでも聞けないと分かっているからだ。
「…マメな男なのね。今までもこうして甲斐甲斐しく世話をやく振りをしていたの?」
「…こんなに手間がかかりそうな女に会ったこともない。」
強がりを言っていても、椿の顔色が蒼白になっていくのに気が付く。
悟はペットボトルを手に取ると、椿を膝の上に乗せて、その口元に近づけた。
椿は透明の水を用心深くジッと見ている。
中に何か入れられていないか疑っているようだ。
悟は舌打ちを堪えて、ペットボトルを先に口につけて水を飲んだ。