第7章 慕情
「…………。」
悟が自分の言葉を聞いてくれないと分かったから、椿もまた悟に返事をするのをやめて、目線すら逸らした。
ギシリと悟の片膝がベッドに置かれ、椿の細い背中を逞しい腕が包んだ。
そのまま体を起こされて、顎を掴まれて悟と向き合うように体を向けさせられた。
椿は自分の体が震えていないか、全身に気を使った。
弱味を見せてたらいけない。
『愛している』と言う弱味につけ込まれて殺された。
『恐怖』と言う弱味を悟に見せる訳にはいかない。
悟はこの悪夢を打ち切るための駒でなければならない。
疲弊しきった心を彼に明け渡して救われてもしてしまったら、愚かにもまた慕情に溺れてしまうだろう。
椿はそのまま悟が駒で居てくれることを願いながら、薄暗い部屋で綺麗に輝く、六眼を見ていた。
「結婚したら、全部僕が食事からお風呂からしてあげなきゃダメなの?」