第7章 慕情
「あれ?もう疲れちゃった?」
目を瞑って恐怖に耐えていると、耳障りの良い低音の声が聞こえた。
椿は蹲っていた顔を少しだけ上げると、目線だけを悟に向けた。
手にはお盆を持っており、ペットボトルの水とサンドイッチが皿に置かれていた。
それが自分への食事だと分かると、椿はあからさまに顔を歪めた。
「…凄い汗だな。飯食べる前に風呂に入る?SEXした後もそのまま来ちゃったしね。」
悟はベッドの横に置かれていたはずの小さなサイドテーブルを立て直して、お盆を置きながら言った。
人が来たからだろうか。
さっきまで孤独の恐怖に戦っていた心情が、少し軽くなった。
「……お風呂もそれも要らない。帰して。」
そう言って悟を見る椿の表情は、いつものように能面だった。
だけど、強がっている唇が静かに震えているのを悟は見逃さない。
「風呂と飯、どっちがいい?」
「要らないって。」
「どっち?」