第1章 五条悟の婚約者
コイツに感情を求めるのは諦めよう。
そう思いながら、悟は椿から目を離した。
それで済んだと思った椿が、昴に近付いた。
スッと手を昴に差し出す。
「帰ろう、昴。」
昴に手を差し出して、そう言った椿に、悟は目を見開いた。
椿が微笑んでいるからだ。
その瞬間、何かがストンと悟から抜け落ちた。
同じ様に無表情の昴の手を取って、2人は悟に背を向けて、去って行く。
ああ……やってらんねぇー…。
何で僕は10年間も、椿の言葉に従って一条昴を育てたのだろうか。
傲慢なあの女の為に。
その日から僕は、伊集院家の鎖を外した。
鎖に繋がれた一条昴の後ろ姿を嘲笑うかの様に。
「ちょっ…君がっつき過ぎ……。」
何処かの安いラブホに、適当に出会った女と入った。
記憶が正しければ、これが僕の初体験だ。
「そうなの?俺分からないから教えてよ…。」