第6章 狂気の月
夢中になり、直哉に抱き付いていたのは自分の方だった。
何度も何度も愛を囁き、それでも足りなくて直哉の体にしがみ付いていた。
同じ行為には、とても思えなくて。
今はやっと終わった行為に安堵して、悟の背中に手を置いている。
だけど、そこで違和感が生まれた。
ずっと夢の中の感覚は、現実の感情の様に椿を支配していた。
死ぬ時は苦痛と苦しみを。
直哉に愛されている時は、悦びと快楽を。
そしてそれは自分の感情だとずっと思っていた。
(……いつから私はあの夢の感情が、全て自分の感情だと思っていたのだろう……。)
同じ様に荒い息を吐いて抱き締めてくるこの腕も、夢とはそれほど変わらない。
だけど自分が感じた痛みや感情は、夢とは全然違っていた。
(…相手が悟だから?)
だから夢と同じ様な気持ちにならなかったのだろうか。
悟の事を愛してはいないから。
なのに、夢よりもずっと。
この感情の方が自分らしいと思えた。