第6章 狂気の月
それが悟にとって逆鱗に触れるとは思ってもいなかった。
悟は自分にキスをしてくる椿の顔を見ていた。
その顔に情慕の気持ちが無いと分かって、悟はその目を歪めさせた。
「!!」
急に悟の腕に横に倒されて、膝裏と背中に彼の腕が回った。
悟に抱き上げられて、椿は咄嗟に悟の胸元を掴んだ。
ゆっくりと見上げて見た悟の顔は、無表情のまま椿を見下ろしていた。
その悟の顔に、全身の毛穴が広がった感覚がした。
言いようの無い身震いが全身を襲う。
そう例えるなら、夢で呪霊に殺される瞬間の様な。
そんな恐ろしさに包まれた。
「……悟……。」
思わず、縋る様な声を出した。
怯えて自分の名前を呼ぶ椿に、悟はニッコリ笑った。
「そんなに震えてどうしたの?」
その異様な場の雰囲気がまるで当たり前の様に、悟は綺麗な顔をして笑っている。
「初めてだから怖い?」