第5章 独裁者
それが、悟の指示だと分かっていたから。
椿も昴も、何も言わずに従った。
母屋を離れて、昴が案内されたのは、かつて自身が過ごしていた離れだった。
禪院家から隠される様に幼少期を過ごした場所。
久しぶりの光景を見ても、特段懐かしさは感じなかった。
「!」
それよりも驚いたのは、昴の目の先に悟が居たからだ。
「……思ったより怪我の治りが早いね。」
普通なら死んでもおかしく無いほど殴った。
ベッドから起き上がれるのがおかしいと言うのに、昴はこうして五条家まで来た。
椿の命令通りに。
「…反転術式か…、相変わらず筋がいいね…。」
「……………。」
教えて貰った術式では無いので、確証は持てなかったが、なんとなく昴も自分が反転術式で命を繋いだのは気が付いていた。
(…と言うか…、この人本当に俺の事殺そうとしたのかよ…。)
自分の前で笑っている悟を見てゾクッとした。
そんな男が、椿では無く、自分の目の前に現れた。
嫌な予感がするのは当たり前だった。