第1章 五条悟の婚約者
だけどこの時から、僕はこの犬っころが大嫌いだった。
椿の特別だと振る舞われる野良犬が。
それは躾のしがいがありそうな犬だ。
「……何で俺なんだよ…。」
昴は受け入れた。
だけど悟は、何故椿が自分を選んだのか。
普段なら気にならない答えを求めていた。
気に入らない魔女相手に。
「……悟が1番顔が良かった…。」
椿はポツリと表情も変えずに言った。
意外だった椿の言葉に、悟は目を大きくして驚いた。
(何だ……椿は俺の事が好きだったのか。)
まだあの頃の僕は純粋だったのだろう。
真っ直ぐにそう言った椿の言葉に、自分を好きなんだと素直に頷いた。
そう考えたら、隣にいる犬っころも可愛く見え……。
あまり可愛くは見えなかった。
やっぱり太々しく見える。
「じゃあお願いね、悟。」
そう言って、椿は犬っころ『一条昴』を置いて行った。
絶対偽名だろう。
そう思いながら、隣にいる昴をギロっと睨んだ。