第5章 独裁者
今日会った悟の表情を思い出す。
今日だけじゃ無い。
椿に対して悟が見せる態度や表情。
椿に見せる独占欲はあるのに。
結婚に関してはこちらがお願いしなければしてくれなさそうだ。
もて余す。
その一言に尽きる、厄介な救世主。
そして……椿の婚約者だ。
だけど椿は、どう振る舞えば悟が喜ぶかは知っていた。
本当は分かっていて、悟が喜ぶ様な事をしてこなかった。
何故だろう。
直哉に対しては彼が喜ぶ事を全てしても尚、尽くし足りなかったのに。
悟が椿を見るあの目付き。
そして綺麗な六眼を見ていると。
どうしても争いたくなる。
「……………。」
それがどんなに非合理的かは知っている。
だけどどうしても悟の思い通りにさせたく無い、幼い感情がある。
(こんな気持ちになるのが面倒臭くて…悟を選んだのに…。)
強い悟の庇護の元で、彼の子供を産む。
そしてその後は、自分の人生を取り戻す。
そんな当初の目的が、悟の一言でどんどん崩れていく様な感覚だった。