第5章 独裁者
椿は悟の足音が遠くなるのを確認してから、はだけた衣服を整えた。
「………………。」
窓から悟が車に乗り、伊集院家を出るのを確認して部屋を出た。
足早に向かった先は、昴の元だった。
「昴!」
勢いよく部屋を開けると、ちょうど医者に診てもらっている最中だった。
椿は昴が寝ているベッドに近づき、その顔を伺った。
見た瞬間、ゾクッと悪寒が走った。
昴の顔は黒く腫れ上がっていて、元の素顔が分からないほどだった。
今まで訓練として悟が昴を怪我させた事はあるが、こんなに酷い怪我をしたのは初めてだった。
「……しばらく入院が必要です……。」
何か大事件に巻き込まれた様な昴の様子に、医者は戸惑いながら言った。
「…………ダメよ………。」
安静が必要な昴の処遇に、椿はハッキリと拒否をする。
椿の声に、昴はゆっくりと目を開けた。
そして自分を見下ろしている椿を目にする。
昴を心配そうに見ている表情の中には。
椿自身を心配して、不安になっている感情の方が強く受け取れた。