第5章 独裁者
「?!」
椿は抱き上げた自分を見る悟の顔を見て、ヒヤッと汗を流した。
綺麗な六眼は冷たい色で椿を見上げている。
「……悟……。」
思わず縋る様な声が出てしまった。
挑発的な態度を取り続けるには、とてもじゃ無いけど場が悪かった。
大人しく少し肩を震わせる椿を見て、悟はやっと笑った。
その微笑にまた戦慄した空気が流れる。
「………ああ……それでいい……。」
悟は満足そうにそう言うと、椿の肩に強く噛み付いた。
痛みで体が跳ねて、悟の肩を強く掴んだ。
「……椿…、今週末は五条家においで。」
しかし悟は椿の痛みには反応せずに、それだけ言うと、椿を下ろして彼女の体を離した。
「……………。」
急に離れた悟に困惑しながら、部屋を出て行こうとする悟の背中を見た。
「もちろん、あの犬っころも連れて来い。」
そう言って悟は最後に椿を見て、笑って見せた。
そしてそのまま椿の部屋を出て行く。