【ヒロアカ】Until You Live【爆豪勝己】
第3章 【二巡目】
コンロの上では、フライパンの中身が限界を迎えていた。熱でドロドロに歪んだ白い液体が禍々しく泡立って跳ねる。次の瞬間、ボンッと小さく爆ぜた。
キッチンの入り口から上鳴が顔を出す。
「なんかすげー煙出て……」
だが、抱き合う二人を見て、上鳴の表情が凍りついた。
「あ」
そしてコンロでは、フライパンが黒い煤を吐き出しながら、じりじりと火柱を上げ始めていた。
上鳴の間抜け面と背後の熱気で、爆豪は白熱する脳内からようやく状況を把握する。
しかし、離れない。透を抱く腕はそのままに、赤い目だけがフライパンを睨みつけた。
「おい、アホ面」
「は、はい!?」
「消せ」
「いやお前が離れろよ!!」
透が、心配そうに爆豪を見上げてくる。
「……爆豪くん、どうしたの? 何か、嫌なことでも思い出した?」
的を射た問いだった。透は人のことをよく見ている少女だ。今の爆豪が、ただのスキンシップでこうなっているわけではないことくらい、すぐに察する。
びくりと爆豪の肩が揺れた。
嫌なこと。そんな生易しい言葉で片付く記憶ではない。お前が死ぬ。俺も死んだ。だがそれをどう説明する?「お前二日後に死ぬから俺の傍にいろ」なんて言えば、正気を疑われる。
ようやく腕を解く。けれど、手は透の袖を掴んだままどうしても離さない。俯いて、金髪の前髪で表情が見えなかった。
赤い瞳の奥に、恐怖が滲んでいた。怒りでも虚勢でもない、純粋な恐怖。この少女を失うことへの。
コンロから上鳴がフライパンを救出し、なんとか火は収まっていた。焦げたアイスだったものが、哀れな残骸を晒している。