【ヒロアカ】Until You Live【爆豪勝己】
第2章 【一巡目】
爆豪もまた、その場に膝から崩れ落ちた。
床に倒れ込む透の傷口を押さえようとして――自分の左手が使い物にならず、空いた右手しかないことに気づく。爆発の至近距離にいた爆豪の左手もまた、肉が裂け、激しく損傷していた。
「あ、あ……あ……っ!?」
脳が現実の処理を完全に拒絶していた。
さっきまで笑っていた。おめでとうと言っていた。「一番にお祝いする」と、わざわざホールケーキを焼いて。プレゼントまで用意して。
「クソっ……止まれ、止まれよ、おい!!!」
血に濡れた両手で必死に彼女の傷口を押さえるが、指の隙間から止めどなく温かい赤が流れ出していく。爆豪の焦燥に呼応して爆破の個性が暴発しかけ、体からパチパチと小さな火花が虚しく散った。
あまりの爆発音と悲鳴を聞きつけて、隣室の切島が勢いよく飛び起きてきた。廊下に出た切島の悲鳴が上がる。館内にけたたましい非常ベルが鳴り響く。だが、爆豪の耳にはもう何の音も届いていなかった。
爆豪は透の顔を覗き込む。あの美しい山吹色の瞳から、急速に光が消えかけている。
「おい! 死ぬなや!! なんで、また……っ!!」
透の青白い唇が、ゆっくりと動いた。
「……ごめんね」
声にならない、かすれた吐息のような謝罪。
その言葉を聞いた瞬間、爆豪の中でパキリと何かが完全に壊れた。
「謝んな!! 何謝ってんだよ!! お前は何も悪くねぇだろうがよおぉぉ!!」
廊下はすでに騒然となっていた。切島の叫び声、階段を駆け上がってくる大勢の足音、相澤への緊急通報。だが爆豪には、そのどれもが遠い世界の出来事のようだった。腕の中の愛おしい体温が、急速に、冷酷に失われていく。