【ヒロアカ】Until You Live【爆豪勝己】
第2章 【一巡目】
目の前にあるケーキは、お世辞にも上手とは言えなかった。
生クリームの塗りはムラだらけで、並べられた苺のバランスも左右非対称でガタガタだ。だが、その中央には、歪な文字でしっかりと『Happy Birthday』と書かれたチョコプレートが乗っていた。
初めて作った、と彼女は言った。この日に、たった一人でキッチンを使って。何度失敗したのか、彼女の指先や爪の隙間に微かに残った小麦粉の痕が、その必死な時間を物語っていた。
喉の奥が焼けるように熱くなる。何か言葉を返そうとしたが、どうしても出てこない。いつもなら即座に悪態が飛び出すはずの口が、開いたまま完全に固まっていた。
非常灯の緑色の鈍い光だけが、静寂に包まれた廊下で二人を静かに照らしている。
爆豪はフッと眉間の皺を緩め、小さく息を吐いた。
「……一緒に食うか」
深夜に男の部屋、なんていうのはもうどうでも良い。ただ、一生懸命に自分を祝おうとしてくれたこの少女と、もっと一緒にいたいと純粋に思った。
透は一瞬だけ驚いたように目を見開いたが、次の瞬間には満面の笑みを咲かせた。
「うん!」
爆豪が部屋の扉を大きく開き、透がその部屋へと足を踏み入れようと一歩進んだ。