【ヒロアカ】Until You Live【爆豪勝己】
第2章 【一巡目】
そこへ、会話を聞きつけた上鳴がひょっこりと現れる。
「お二人さん、なんか仲良くない? 知り合い? 中学一緒だったの?」
あの粗暴な爆豪が、女子の隣で比較的落ち着いて会話をしているのを、物珍しそうな目で見ている。
爆豪はギロリと上鳴を鋭く睨みつけた。
「馴れ馴れしく話しかけてくんじゃねえ、アホ面が」
「ひぇっ!」
上鳴は両手を上げて、すかさず瀬呂の後ろに隠れる。
「怖っ……でも否定しないってことは、やっぱ仲良いんだ!」
瀬呂が呆れた顔で上鳴の襟を引っ張った。
「お前さ、本気で死にたいの?」
爆豪は小さく舌打ちをして、缶の残りを一気に喉へと煽った。
上鳴と瀬呂がまた後ろの方で「爆豪が女子と普通に喋ってる」「奇跡じゃね」と囁き合っているのが聞こえたが、完全に無視した。以前の自分なら確実に爆破して黙らせていた場面だが、今の爆豪にはそんなことに割く余力がない。考えるべきことが、山ほどあるのだ。
空になった缶を容赦なく握り潰し、ゴミ箱に放り込んで立ち上がった。
そのまま透にも振り返ることもなく自室へ向かったが、階段を上がる途中で、ふと足が止まる。
壁に背中を預け、誰もいない階段の暗がりで天井を仰ぎ見た。
(あの事故……前回は、一緒に自主トレーニングをした帰りだ。四月十八日。並木道横の横断歩道。夕方の、十八時頃。……車のブレーキ痕は、なかった)
記憶を脳内で何度も反芻する。前回の事故の、あらゆる状況。時間、場所、車種。使える情報は、どんなに細かなことでも全部使う。
(変えられるのか、未来は。それとも……また同じことが起きンのか)
爆豪の赤い瞳の奥で、静かな、しかし決して消えない執念の炎が、じらじらと燃え盛っていた。