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閉店屋の恋は進まない

第15章 日々


こんなふうに、茶化し……気遣われるようになってしまったのだ。
「またそのお嬢様扱い……大丈夫だよ」

 今回も、そう言ってノルバートが苦笑いすると、その隣でジュースを飲んでいた寮生が、さらにいらないことを言った。
「お嬢様、この間おすすめいただいた小説、大変『教養』を感じましたわ」

 ノルバートはわりと色々なものを読む。男性向けも女性向けもある程度目を通す。
 少し前に本のおすすめを聞かれて、つい熱が入り喋りすぎたのはしっかり覚えている。迂闊なことをした。

「お嬢様?! あの御本をご存知ですの!?」
「や、やめ」
「流石ですわ〜。目が肥えていらっしゃる」
「やめて」
「実際、あれはかなり良かったですわ」
「……続き、借りる?」
「ヤッタ〜〜〜!!!」

 そんな積み重ねで、今となっては、彼が少しでもぼろを出すたびに皆は大喜びだ。


 日付を越えて、時計の長い針が二周した頃だった。

「なあ……みんな、今からちょっと生々しい話いい?」

 深夜の勢いだろう。流石に伺いを立ててくる、という時点で内容の察しはつく。

 面々は全力で食いついた。

「よくってよ」
「聞きたいですわ」
「すてき!」

 裏声が太い。

 そして、全員がノルバートのほうを期待を込め、見つめた。

「……なんでしょうか」

「いつもの、どうぞ」

 また。ノルバートはため息をつく。

「どっ、どうぞ。お話しに……なって……」

「っっっしゃあ!!!お嬢様承諾!!!」

 男子寮の夜ふかしは、ますます盛り上がるのだった。 

◇◇◇

「ねえ、ノルバートってたまにお嬢様呼びされてない? あれなに?」

 休み時間。
 シシィにいきなり聞かれて、ノルバートは食べていたパンを落としかけた。
 
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