第10章 狼狽の行方
◇◇◇
「おーー、ノルバートおはよ」
「あ、ゼラくん。おはよう」
「今日も隅の方にいるなー」
「君こそまた廊下の真ん中歩いてきたね」
ゼラは誰とでもよく喋り、校内での評判もいい。
おかしな始まりの関係ではあったものの、彼はすぐにノルバートの気質にも慣れ、本当にそこそこ喋る仲になってしまっていた。
「で、検閲は? 通過まだ?」
ゼラがお決まりの問答をふっかける。
「あー、そこは……審議中、です」
そうやって二人がのらりくらりと会話をしているうちに、シシィも教室に入ってきた。
「おはよ!」
「シシィ。おはよう」
「おう、おはようさん」
「あっ! えっと、おはよう……ございます!」
シシィは、彼がいたことに少し驚いてから挨拶を返した。やはり、どうしてもあまり知らない人には緊張するらしい。
ゼラは時計をちらと見ておっと、と立ち上がった。
「俺、次実験だから着替えないとだったわ。そろそろ行くけど、またな!」
「うん、また」
彼は来た時と同じように大股で教室を突っ切っていった。
その背を見送ってからしばらくして、シシィがノルバートに尋ねる。
「最近あの、ゼラくん? 仲良いね?」
「まあ……」
ノルバートは曖昧な返事しかできなかった。
さっきのように、シシィとの関わりが発生しそうになるたびに、ゼラはいつも自然に席を外す。
検閲と茶化しながらも、彼はノルバートの返事が来るまでは、動かずに待つ姿勢をずっと示し続けてくれている。
その律儀さが、今のノルバートには日に日に痛く刺さっていた。
◇◇◇
「何? 話って」
ノルバートとゼラは学外の小さな飲食店を訪れていた。ノルバートが「奢らせてほしい」と言った時点で、ゼラはもう察していたのかもしれない。
席についてからしばらくして、ノルバートはやっと切り出した。
「シシィの件だけど」
「……やっぱり、僕からの紹介は無理だ。理由は……僕も、シシィが好きだから。もっと早くに言えなくてご……」
「いや、知っっっとるわ!!!!」