第10章 狼狽の行方
「……えっ」
突然の問いに、ノルバートはすぐには反応できなかった。
あー、急にごめんな、とゼラは頭を掻く。
そして、少し待ってから用件を続けた。
「いや実は俺さ、シシィちゃんの事だいぶ気になってて」
「つっても、向こうからしたら接点薄いじゃん? だから、俺がどんな男か知ってもらうのから始めたいんだよ。んでその前に一応、お前には確認しとくかーって思ってさ」
「でも……ええと」
「あー、やっぱ付き合ってた?」
「付き合って、は」
おっ、とゼラの声が明るさを増す。
「まじ? じゃあできたらなんだけど、いい感じに紹介してくんない? だいぶ人見知りみたいだし……」
「しょっ……?!」
どうする。
……どうする?!
ノルバートの脳内はこの時、あらゆる理屈と感情でごった返していた。
よく知らない相手を、いきなりシシィに紹介?! いや、それはできない……しかも、そういう意図があるならなおさら迂闊には。
しかし、そもそもこういう話は下手に自分が仲介しない方がいいのでは……? シシィの人間関係を狭める権利は誰にもない。ましてや、恋人でもない僕がそんな……でも、でも……!!
「ええっと」
ノルバートはやっと口を開いた。
「おう」
「とりあえず、まずは僕と友達になるのは……一旦、そこから、どうでしょう……?」
「は???」
ゼラの声には、明らかに困惑が滲んでいた。
「なんだそれ??」
彼はノルバートの顔をまじまじと見るが、目は合わない。
奇妙な静けさの中、読みかけの本のページだけが、呑気に木漏れ日と遊んでいた。
「……なるほどな。ありっちゃありだわ」
沈黙を破ったのはゼラだった。
「えっ?」
狼狽えるノルバートに彼は続ける。
「だってほら、同じ知らん男ならさ、お前と仲良い奴の方がシシィちゃんからの信用値もあがる。そうだろ?」
「それは」
「てことで、乗るわ。前向きに検討よろしく。な?!」
彼は親指を立ててノルバートの前にぐいと突き出した。
「あ、うん、よろしく……?」
ノルバートも慣れない動きで、その手の形を真似た。