第9章 作る人
「……この絵さ、ノルバートはどうやったら良くなると思う? 気になるところとか、あったら」
「えっ?」
ノルバートは驚いた顔で顔を上げた。
「僕の、意見? 素人だよ」
「でも、美術は好きでしょ。素直な感想文でいいの!」
「ええ……」
シシィがもう一度頼むと、彼は躊躇いながら口を開いた。
「……確かに、遠目で見た時に少しぼんやりとはしてる、かもしれない」
それから立ち上がって絵に少し寄り、続ける。
「近づいて見えてくる良さはすごくあって、この繊細な空気が素敵だと思う。でも、その良さが遠くからわかりにくい感じはする。もっと派手に、というより、背景とモチーフの色が近いからなのが大きいのかな。……どうなんだろう、優しい色同士でも反対色にして対比させたり、とか……?」
そう言ってから、申し訳なさそうに付け加えた。
「あ、適当に無視してね。ぼく自身は描いたこともないし的外れかも」
「いやいや! ありがと!」
「展示で言われたのってそういうことだったのか〜ってやっと納得できたかも。反対色、ちょっとやってみる!」
それからシシィは集中して制作を進め、ノルバートも横で静かに本を開いていた。
そうやって三十分もした頃、乾き待ちに差し掛かってシシィはやっと筆を置いた。
「ねえ、もう一つ相談していい?」
「いいよ。どうぞ」
彼は美術書をめくる手を止めた。
「実は……さっきの人のこと。今度の自分達のグループ展に来ないかって誘われたんだ。学外の」
「へえ、グループ展か。作家さんなんだ」
「そう。そうなの。でも……」
シシィは言い淀んだ。
「展示の時、最初にすごーく褒められたの。
そのあとはアドバイス。色々教えてくれて。でも、なんだか……長かったのがずっと気になってて。くれた展示案内見てる分には、活動年数もだいぶ長そうなんだけど、関わって大丈夫かなあこれ……? って今、なってるとこ」