第8章 夜の庭の迷子
「おー!おとなだ!」
なんとか両手を捕まえて繋いだものの、今にもシシィは押し負けそうだ。
「ええ? どこの子?」
「わかりません……庭にいたんです」
フーネットさんは、なるほど? と頷き女の子のほうにも視線を合わす。
「きみ、お名前は?」
「トリシャネーリェン!」
「え、トリ……なに?」
「ト〜〜リシャネ〜〜リェン〜〜!」
「なんて? とりちゃん? というか名前、文字でかける?」
「もじぃ〜〜しらん」
「ほな、とりちゃんかあ…」
フーネットさんは諦めが早かった。
◇◇◇
「え……と、ごはん、食べる?」
談話室の湯沸かし魔法具の前で、シシィはまだ少し緊張していた。
小さい子の面倒、ましてや迷子を保護するなんてこれまでにやったことがない。
ど、どうしよう、ノルバートならこういう時の対応すごくちゃんとできそうなんだけど……もし彼だったら……? あっ! 報告! 報告しなきゃ! と思いついた。
それであわあわしながらとにかくフーネットさんに知らせたのだった。
どうぞ、と言ってロールパンとミルクでぬるめたスープを出してあげると、とりちゃんはうおお、と目を輝かせる。よかった。これでしばらく座っててくれそうだ。
そこでフーネットさんは聞き取りを始めた。
「どこからきたの〜? 一人? 大人の人は?」
「ひとりたびだぞ!」
ちょっと得意げだ。
「えー、じゃあ、おうちはどのへんかわかる?」
「むこうらへん!」
ざっくりな方角しか情報が出てこない。
「むこうか〜」
日が昇りはじめていた。
とりちゃんはだんだん眠たそうにし始め、今は毛布をもらってソファでお饅頭のようになっている。
「……まあちょっとよくわからんけど、とりあえず迷子として警察と学校には連絡したから、ぼちぼち迎えにきてくれるよ。シシィはすぐ報告してくれて助かった」
やっと静かになった談話室でフーネットさんは頭を掻いた。
「寮の防壁魔法も抜けチェック依頼せんとね。そんで夜更かしは……今日だけ見逃してあげよう!次回はおこるぞ?」
「は、はい……」
シシィの反応にフーネットさんがわはは、と笑った声で、寝ていたとりちゃんがもぞもぞと身動きした。
「あっやば、起きる起きる」
「あっ、あっ……」