第8章 夜の庭の迷子
◇◇◇
「やだーーっ!!あそぶあそぶあそぶ!!」
「だーめだよ。ほら、もうお迎えきたから」
わらわらと起きてきた寮生達に遊んでもらい、とりちゃんはこの短時間ですっかり女子寮が気に入ったようだ。
今はフーネットさんに向かって全力で駄々をこねている。
「まったく、往生際の……って言われてもわからんか。ほら、シシィにちゃんと挨拶していきなね」
「シシィ!」
「あ、とりちゃん」
そろそろ授業にいこうとしていたシシィにとりちゃんが駆け寄ってきた。
そしてワンピースの、ポケットのような懐のようなところから何かを取り出す。
「やる!」
「羽根……? 綺麗だね」
「たからものだぞ!」
「たからもの、わたしに……いいの?」
「もらえ!」
◇◇◇
昼休みの教室の隅。
「あれ? シシィの今日の栞? 金色、銀色、どっちだろ。めちゃかわい〜ね!」
シシィはちょっと重たい瞼をあげて、えへへ、と声の主に、その羽根を見せた。
おっ、ええやん、と皆もわらわらと見に来る。
「ほんとうだ。すごく綺麗だね」
「ひょっ……」
「シシィ?」
いや、シシィ? ではないでしょ。
不意に耳元に近い位置で声を浴びてしまった。抗議したい気持ちを抑えながらシシィは彼と自分の間に本を挟んだ。
「これ、これね。昨日というか今朝なんだけど、いろいろあってもらったの。……聞く?」
話し始めたシシィの手の中で、一瞬、羽根がきらきらと輝いたのを、誰も見てはいなかった。