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閉店屋の恋は進まない

第7章 解禁できない


 ノルバートの様子がおかしい……かもしれない。
 
 互いの授業が一通り終わった昼下がり。
 図書館に移動するために、大学の庭を横切りながら、シシィは隣を歩く彼をちらと見た。

 今日、なんとなく距離、遠い……?

 返事も、微妙に遅い気がする。

 昨日まで普通だったのに……なんで?
 元気ない?
 嫌なことでも……あったのかな。
 それかわたしが、なにかしちゃった?

 迷ったが、声をかけてみる。

「ノルバート」

「……へ、はい」

 ……やっぱり、ちょっとぎこちない。

「えっと……今日、どうしたの……?」

「……っどうとは、その」

 彼は、違うんだ、と何かに対して否定を入れた。

「じつは」

「うん」

「実は、今日は……ギルドの夜間警備の案件からそのまま学校来たから、ええと、汗臭いかも、しれなくて……」

 そう言う間にも彼は、手を自分の顔の周りにかざしたり耳たぶをいじったりしている。

「あ、そゆこと?」

 わたしのことじゃなかった。そこだけは……ほっとしたけど。
 
 まただ。

 この人、また頑張ってる。

 よーし。

「臭いとか、ぜんぜんわかんないよ? ……っていうか、徹夜なの?」

 そう言って、手をわきわきしながら、少しだけ寄ってみた。

「仮眠はとれてるよ……え、なん、でしょう……?」

 ノルバートはわずかに、びく、とする。

「……や、あの、撫でてあげよっかなって、思ったり……?」

「そ、それは」

 こそこそと逃げる彼を、そのまま、軽く追いかける。

「あの、シシィ……!」

 普段の身のこなしはどこへやら。たやすく花壇の脇まで追い込めてしまった。

「シシィ……っ」

「はーい?」

「ほんとに、今日はだめ……」

「だめなのー?」

「はい、色々とその……薄目で見てもらえると、助かります。よれて、いるので……」

 彼は弱々しく、降参するように手を上げた。
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