第6章 6
「安室さん…。」
安室さんは優しげに微笑んだ。
………なんでこんなに優しいんだろう。
私の胸がぽわんと暖かくなった。
その後特に言葉を交わさなかった。
私たちが乗ってからいくつか駅が過ぎた頃、「ここですね。」とぼそりと声が聞こえた。
よく見ると、朝浮気相手の女性が乗ってきた駅だった。
ターゲットと男性と浮気相手の女性は手を握りあったりと別れを惜しんでいるようだった。
もちろんすかさず写真を撮っている安室さんはさすがだ。
ゆっくり電車が停車して女性は名残惜しそうに降りて行った。
その後電車が3駅進み、男性も降りていった。
安室さんの車もこの駅のコインパーキングなので降りた。
「ホテルの出入りの写真、手を繋ぐなどのスキンシップを取っている写真、別れの写真…、これで十分でしょう。」
安室さんはニヤリと笑った。
………初めてみる顔だ。
「柚希さんお疲れ様でした、任務完了です。」
「わぁー、よかった…。無事に終わったんですね…。こちらこそありがとうございました。」
「もう尾行は終わりです。男性とは距離を取りたいので、少し時間を置いてから僕たちも行きましょうか。」
「わかりました!」
駅改札を2人で出た。