第6章 6
「しーっ。」
安室さんはそう言って人差し指を口に当てた。
コクコクと首を動かしたまま下を向いた。
………私のバカっ…。悔しい…。
私は服の裾を握りしめていた。
電車の中には、スマホから目を離さない人もいれば、キョロキョロと辺りを見回している人もいる。
その誰もが、さっき大きな声を出した私のことを探しているような気がした。
私はバレてしまったんじゃないかととても怖かった。
安室さんからせっかくお仕事をもらったのに…。もしバレてしまったらどうなるの?失敗になっちゃうんだよね。私のせいで…。
それから少しして安室さんが私の耳に口を近づけてきた。
「…今回はこの人の多さに助けられましたね。」
「……ごめんなさ…い。」
「柚希さん…?」
「………。」
「柚希さん大丈夫ですよ。先ほどは急に触りましたから、驚かせてしまいましたか?」
「安室さんは悪くない…です。私が…。」
「…柚希さん…触れますよ。」
そういうと安室さんは私の背中をポンポンと優しく叩いてくれた。
「大丈夫ですよ。バレていません。だから責めてはいけません。」
「…ありがとうございます…。」
「…はい。」
そのまま少しの間安室さんは背中にポンポンとしてくれた。
………本当に魔法使いみたいだ。私の失敗して落ち込んだ気持ちも掬い上げてくれる。
「…もう大丈夫です。さっきまで気を抜かないように頑張りますとか言ってたのに…、本当にごめんなさい。…バレなくてよかった…。」
「落ち着けてよかったです。でも僕は探偵業より先にこちらが気になりますね…。」
そう言って私の目の端の涙をハンカチで拭いてくれた。