第6章 6
その後はお互いが特に喋ることなく穏やかな空気のままいた。
ただもう落ち着いているであろう彼女の手を離すことはしなかった。
………そろそろ2時間になるか…。彼女との擬似恋人もここで終わりだ。なんだかんだ彼女の過去や思いを聞けた、良い機会になったと思う。まさか彼女も警察官だったとは。
…お前たちからも彼女の話を聞いてみたかった。
ぼんやりとそんな事を考えていると視界の端で彼女が頭を振っていた。
視線を彼女の方に向けると彼女は顔を赤くしたり、慌てたり、申し訳なさそうな表情をしている。
………彼女はほんと僕をたくさん笑わせてくれる…。
「なにかありましたか?百面相していますよ。」
彼女は「なんでも…ないです!」と慌てていた。
………また何か考えて込んでいたんだろうか。
…そろそろタイムリミットだ。
「そろそろ2時間になるので盗聴器聞いてみますね。」
彼女から手を離し盗聴器を取り出して耳に装着した。
重ねていた手がほんのり冷えていくのを感じた。
盗聴器からは聞こえてきたのはガサガサとした音だった。
スーツを着ている最中のようだ。
その間に会話も聞こえる。
『帰りたくないね。…今度はいつ会えの?』
『んー…それはわからない。あんまり頻繁に有給も取れないしな…。』
『えー…。』
『まぁ、また連絡するから。さてと準備できた?行こう。』
そんな会話が聞こえてきた。
「柚希さん、彼らそろそろ出てくるみたいです。ここは目立ちますので、場所を移動しましょうか。」
僕はベンチから立ち上がると彼女も僕に続いて立ち上がった。
そのままホテルの出口が見える位置に移動した。
side安室透 end