第5章 5
「あっ、あの!」
「はい?」
安室さんは先ほどの穏やかな表情のまま首をかしげた。
「あっ、いえ、えーっと…。」
なにか言おうと思うのに言葉がでなかった。
さっきまで幼馴染の話をして泣いていたのに、今は別の意味で胸が苦しかった。
私が言葉に詰まるのを急かさず待ってくれていた。
そして、くすっと笑った。
「柚希さん元気になりましたか?」
その言葉で先ほどまでの重苦しい感情が和らいでいくようだった。
「はい…。」
素直に答えると安室さんは安心したような表情を浮かべて「それならよかったです。」と目を細めた。
その笑顔をみて私の心はまたじんわりと暖かくなった。
辛いことや後悔は変わっていないのに、安室さんに話を聞いてもらってとても心が軽くなった。
すこしずつ前を向いてもいいんじゃないかと思った。
「安室さん…、また何かあったら話を聞いてもらってもいいですか?」
一瞬びっくりした顔をしていたがすぐに笑顔になった。
「はい、何度だって聞きますよ。」
「安室さん、ありがとうございます。」
「いえいえ。今日柚希さんからはありがとうを貰いすぎですね。」
安室さんがくすりと笑った。
………安室さんが笑ってくれるととても安心する…。
「…そう。その笑顔です…。」
安室さんは優しく目を細める。
「やっぱり柚希さんは笑っている方がいいですね。」
つられて私も笑っていた。
そんな私をみて安室さんは優しく微笑んでくれた。
胸の奥でトクンと鼓動が跳ねるのを感じた。