第5章 5
あの後もしばらく安室さんは手を握ってくれていた。
穏やかな空気のままの私たち。
………周りから見たらカップルに見えちゃったりするのかな…ってばかっ。
…なにを考えてるの私…。
安室さんは私が安心するために握ってくれているだけなのに。
そんな風に思うのは安室さんに悪いと思い、首を横に振る。
前を見ていた安室さんがくすくす笑い出した。
「なにか考え事ですか?百面相していますよ。」
「あっ。いえ、なんでも…ないです!!」
私は慌てて答えると、安室さんは不思議そうな顔をして言葉を続けた。
「…ならよかったです。柚希さん、そろそろ2時間経つのでなので一回盗聴器で聞いてみますね。」
「はっ、はい!」
そういうと安室さんは私から手を離して、ポケットからイヤホンを取り出して右耳に取り付けた。
手が離れただけなのに、急に距離ができた気がした。
………ずっと握っててくれたから…すこし…寂しいかも…。
盗聴器…。
もちろん忘れてたわけではないけど。
いま仕事中だったことを再確認した。
安室さんは先ほどまでの穏やかな顔つきから真剣な表情になり会話を聞いている。
その真剣な瞳に少し鼓動が早くなるのを感じた…。