第4章 4
顔や耳に熱が集まり始めた。
安室さんの顔が見れなくてふいっと顔を横に向けた。
「もうまたそういうこと言って…。とりあえず離れてくださいー…!」
左手で安室さんの肩を押す。
けれど繋いだ右手に力が入り、逃げる隙もなく壁際へと押し込まれた。
びっくりして前を向くと安室さんの鎖骨が思いの外近くにあった。
それとともにふわりと香ってきた匂いは以前のアポロの時とは異なってどこかシトラスのような香りだった。
………落ち着く匂い…。でもこの香りどこかで嗅いだことある…。あれ?どこだっけ…。思い出したいけど思い出せない…。
安室さんは繋いでいない左手で私の右にかかる髪の毛をさらりと後ろに流して耳を露出させてコソコソ話をするように口を寄せてきた。
「柚希さん…。だめですよ、…そんなに嗅がれては僕も照れます。」
安室さんの言葉にはっとした。無意識だった。
………こんなん私変態じゃないか!
「ごっ、ごめんなさい!不快な気持ちにさせてしまって!」
「大丈夫です、不快とかはないですよ。ただドキッとしちゃいます。」
「…ええ!!」
………ドキッ?あの安室さんがドキってしたの?えっ、それはないでしょ…。
安室さん私のこと揶揄ってるのか、いちいちびっくりするからやめてほしい。
「もう安室さんの冗談は心臓に悪いです!」
「冗談ではないのですがね。……柚希さんちょっと失礼。」
安室さんは左手で急に私の頭を一撫でした後私の顎をくいっとあげた。
………へ?…な、な、なにごと!?えっ、急になんで!?
頭の中ではうるさく考えが巡るのに目の前では安室さんの綺麗なお顔が私に近づいてきて、体が固まったように動かない。
安室さんの形のいい唇があと数センチに迫ったところで思考が停止してぎゅっと目を瞑った。