第4章 4
ターゲットを追って電車で3駅ほど行くと1人の女性が乗ってくるのが見えた。
その女性はターゲットに近づくと顔を綻ばせながら話している。距離も近い。
ターゲットも当たり前のように女性の腰に手をやり引き寄せていた。
「柚希さん、ちょっとこちらへ。」
耳元で囁かれ、思わず肩が跳ねる。
………近い…。
安室さんの声がすぐそばで聞こえ、心臓がまた落ち着きを失った。
私は慌てて頷き、指示に従って移動した。
私と安室さんはターゲットに背を向ける。
「柚希さんせっかくの初デートですし、記念写真でもとりましょうか。」
ニコニコしながら安室さんは声をかけてきたので、こくんと頷くと安室さんとの距離が縮まる。
彼女役だから仕方ない。
そう思いながらも、心臓は忙しなく鼓動を刻んでいた。
安室さんはスマホをインカメラにして写真を撮った。
「撮れましたよ。また送りますね。」
安室さんは自然に2ショットを撮るふりをしながら後ろのターゲットたちを写真に収めた。
スマホを確認した後「ばっちりです。」と満足そうに微笑む安室さん。
さすがだなと感心する。
そして、その笑顔にまた胸が高鳴ってしまう。尾行中なのに困ったものだ。
私は小さく息を吐き、視線を前へ戻した。