第4章 4
side安室透
今日の浮気調査は柚希さんとの尾行だ。
本来なら一人で十分だった。
それでも彼女に声をかけたのは、調査の効率化などではなく、ただ少しでも長く同じ時間を過ごしたかったからだ。
実際の恋人は無理でも恋人役として今日だけでも僕のそばにいてほしいという僕のエゴ。
今日は平日のためターゲットは会社へ出勤する予定でいると奥さんより連絡が入ったため集合は午前8時。
合流場所まで車を走らせると柚希さんらしき人が公園の傍に立っているのが見えた。
………くそっ、かわいいな…。
髪の毛は緩く巻かれ、服装は女性らしいが動きやすそうだ。
仕事だとわかっていても僕の心臓はトクンと高鳴った。
車を柚希さんの前で止め、助手席に乗ってもらい車を出発させる。
柚希さんは車に乗ってからキョロキョロと車内を見回していた。
………とくに気にするようなものは積んでいないが…。
探りを入れるつもりで聞くとRX7に乗るのが初めてで、幼馴染が好きだったと聞いた。
……… 柚希さんの話によく出てくる幼馴染。RX7が好き。
一瞬、もう会うことができない友人の顔が脳裏に過った。……いや、そんな偶然あるわけがない。
「そうなんですね、また乗りたくなったらいつでも歓迎しますよ。」
「ありがとうございます。じゃあまたお願いしますね。」
柚希さんは嬉しそうにニコニコと笑った。
その笑顔を見ると今日同行を引き受けてもらえてよかったと思える。
調査はまだ始まったばかりだというのに、すでに今日という日が特別なものになっている自分に、僕は小さく苦笑した。
side 安室透 end