第3章 3
「おかえりなさい。あの安室さん、こんなタルト作れるなんてプロです。いつもいつもありがとうございます。口の中も心も幸せになりました。」
会計や後片付けを終わらした安室さんがカウンター越しに立っているので私は求人情報から目を離して安室さんを見て話しかけると安室さんはくすくすと拳を口に当てながら笑った。
「それはよかったです。…柚希さん……ここ付いてますよ。」
安室さんはゆっくり私の口のはたについているタルトを親指で取ってくれた。
「あああ、ありがとうございます、すいません…。」
………はっ、恥ずかしい…。安室さんってやっぱり優しいな…。じんぺーくんなら袖でごしごししてきそうだし、絶対痛いやつだな。
安室さんの同い年の幼馴染のことを考えるとふふっと笑っちゃう。
そんな私の顔をみて安室さんはすこし眉間に皺を寄せ、私の顎先に指を添えて安室さんと目線が合うように持ち上げられた。
「…へ?」
呆けた声を出したあと、状況を理解し、頬や耳に一気に熱を持つ。
………こここっ、これ顎クイというやつなのではないでしょうか!?
心臓の鼓動がうるさくてこの距離でも安室さんに聞こえてしまうんじゃないだろうか。
私にはキャパオーバーすぎる。
私はばっと顔を後ろに引いて真っ赤になった顔を両手で覆う。
「あっ、あむ、あむ…安室さん…ななななにを!?」
………あのドキドキするんですが…!!もう心臓が飛び出そうで無理なんですけど!…イケメンの破壊力すごすぎる。
安室さんはカウンターに肘をついて私を見ている。
「柚希さんはほんと可愛らしくて、なんかかまいたくなっちゃいますね。僕の作ったものをすごく美味しそうに食べてくれるのを見るととても嬉しいし、なんか癒されます。」
………
もうなにも考えられなくなっちゃう。