第10章 10
side安室透
クリスマスがこんなに心地いいと思ったのは初めてだった。
年末になると警察関係やその上組織の潜入やらなんやらでかなり忙しい。
ポアロが少しホッとできる時間だ。
その時間を彼女と過ごせて自然と笑えている僕がいる。
プレゼントを用意してくれたり、帰り際に僕に労いの言葉をかけてくれた。
それだけで疲れが少しなくなるような気がした。
ランチのお客さんを大体さばいたところで写真を撮ってくれた女性がコーヒーのおかわりを注文された。
「少々お待ちくださいね。」
僕はコーヒーを入れる準備をした。
コーヒーをドリップさせるとコーヒーの芳醇な匂いが広がった。
ポタポタとゆっくり抽出されていくコーヒーを眺めた。
ふと先ほどのやりとりを思い出してクスリと笑ってしまった。
………ほんと天然で可愛らしい。松田たちも放っておけなかっただろうな。
何食わぬ顔でそんなことを考えながらコーヒーをカップに注いで女性の元に運ぶ。
「お待たせしました。」
「ありがとうございます。…彼女さん帰っちゃいましたね。」
「え?…あぁ、彼女はべつにそういうのでは。」
「…あっ、違ったのね。」
そういうと少し驚いた顔をしていた。
「ええ。」
「そっか。ごめんなさいね。仲良さそうだったから…。」
女性は申し訳なさそうな、納得出来なさそうな顔をしていた。
どうやら周りから見ても、僕と彼女は随分親しげに映るらしい。
彼女はそんなつもりはないだろう。
でも僕はどうだ…。
……少し、気を許しすぎているのかもしれないな…。
side 安室透 end