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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第48章 【第四十三話】崩れゆくホーム


その一言で、堪えていたものが切れたらしかった。


「私……っ」

声が、崩れる。


「兄さんを悲しませる気なんて、なかったの。そんなつもりじゃ……」

ラビは、動けなかった。


「でも、どうしよう……っ」

リナリーは、婦長の腕の中で顔を伏せる。


「兄さん、泣いてた……」

今にも崩れそうな声だった。


「私の言葉は、きっと兄さんを責めてた……っ」


ラビは、天井を仰いだ。

さっきの扉の向こうの声が、まだ耳へ残っている。


――ここにいてくれ。

――お願いだから。


あれは、室長としての言葉じゃなかった。


ただの兄貴の声だった。



「自分が死んでもいいなんて、思ってない……!」

リナリーが、しゃくり上げる。


「生きたい……兄さんやみんなと、生きたいよ……」

「でも、その為には戦わないといけないから……っ」


婦長の腕が、強くなる。


「私には、それしかないの」

「兄さんを悲しませたくなんか、ないのに」


嗚咽だけが、暗い病室へ落ちていく。



ラビは、リナリーの隣で扉へ背を預けたまま、目を伏せた。


――生きたい。

――でも、そのためには戦わなきゃいけない。


生きたいから戦うのに、戦うためには死ぬ覚悟まで求められる。



――そんなの、あんまりだろ。



戦うなとも、戦えとも言えなかった。
どっちの言葉も、こいつを追い詰めるだけだ。


膝の上の拳に、力がこもる。

その沈黙へ、リナリーの小さな声が落ちた。


「……イノセンスなんて、大っきらい」



ラビが顔を上げる。

リナリーは、俯いたまま呟いていた。


「どうしてこんなに、苦しまなくちゃならないの」

婦長の靴を履いた足が縮こまる。


「どうして……兄さんを、苦しめるの」



誰も、答えなかった。ラビも、何も言えなかった。



こいつは、自分が傷つく覚悟なら、とっくにできてる。


けど、その覚悟が兄貴を苦しめる。

守るための力のはずなのに、一番傍にいる人間を泣かせてしまう。



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