第48章 【第四十三話】崩れゆくホーム
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どれだけ経ったのか、分からない。
拳が痛みを訴える頃には、声も枯れていた。
――ズズン。
遠くで何かが崩れ、病室全体が大きく揺れた。
天井から埃が落ち、頭上の照明が留め具から外れた。
ラビは咄嗟に、扉の前に座り込んだリナリーを囲うように両手を扉につき、その頭上へ覆いかぶさった。
――ガシャン!!
落ちてきた照明が砕け、部屋が闇へ沈む。
飛び散ったガラス片が、扉へ伸ばしたラビの腕を裂いた。
「ふたりとも! 大丈夫!?」
暗がりの向こうで燭台に火が灯り、婦長が駆け寄ってきた。
「へーキ……すげェ揺れだったさ」
ラビはリナリーの無事を確かめてから、ゆっくりと身を起こした。
「ラビ、腕……切ってるよ……!」
リナリーの目が見開かれる。
「ごめんね……私を庇ったから」
言われて初めて、腕を伝う生暖かさに気付いた。
――痛みが、遅れて届く。
それだけ、頭が別のことでいっぱいだったらしい。
「ああ、照明の破片かな……。ダイジョブさ、こんくらい」
「何カッコつけてるの。来なさい、手当てするから」
「つけてねーよ。平気だって」
そうさ……今は、そんなことどうだって――。
顔を上げると、燭台を手にした婦長がラビの目の前に立っていた。
「あら?」
声が、一段低くなる。
「ケガを手当てするのが私の仕事なんだけど――何か?」
「……すみません」
手当てを終えた婦長が、ふと足元へ視線を落とす。
リナリーは、扉の前に座り込んだままだった。
裸足のまま。
婦長は何も言わず、自分の靴を脱いだ。
「リナリー、私の靴を履きなさい。素足は危ないわ」
「えっ、いいよ。それじゃ婦長が危ない……」
「そうさ、危ねェって婦長。靴ならオレのブーツ貸すから――」
「お黙り」
「あなた達にケガされると、私の仕事が増えるのよ」