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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第48章 【第四十三話】崩れゆくホーム




あいつは動けない。

動けるわけがない。


――そう思いたかっただけだ。



「どっちに行った」

「ラビ」


「どっちに行ったんさ!!」

自分でも驚くほど、声が跳ねた。



婦長は僅かに目を細め、それから静かに答えた。


「……科学班のフロアの方よ」

視界が、一瞬、白く飛んだ。



脇腹の傷は、まだ塞がっていない。
喉だって、長く歌えばどうなるか分からない。


歩くのがやっとの身体で。

あいつは――。



「――冗談だろ」

呟いた声が、ひどく細かった。



ラビは、扉へ拳を叩きつける。

一度。

二度。

分厚い鉄は、びくともしなかった。


「開けろ!!」

叫んでも、返事はない。


「コムイ!! 開けろっつってんだろ!!」

拳の皮が裂けて、鉄へ赤が滲む。


止められなかった。


なんでいつも、あいつは一人で行くんだ。



――もう一人で止めんな。

あの時、確かにそう言った。


言ったはずだった。


方舟で、ヴェインに狙われた時も。
銀の光に呑まれ、あいつが自分を見失いかけた時も。


傍にいたのに、守り切れなかった。


そして今は、武器もなく、傍へ駆けつけることすらできない。



――なんでオレは、いつも。


一番守りたい時に限って、何もできねぇんだ。


「……ちくしょう」

額を扉へ押し当てたまま、膝から床へ崩れ落ちた。

取り繕う余裕は、もう残っていなかった。



冷たい鉄の向こうで、警報だけが鳴り続けていた。


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