第48章 【第四十三話】崩れゆくホーム
本部内を駆けて、異常を伝え終えた頃には、非常灯が赤く点滅し、警報が廊下を満たしていた。
「知らせは済んだし、オレも現場戻るさ!」
そう言って、ラビは第五研究室へ戻ろうとした。
「ラビさん、どこへ!?」
チャオジーの引き止める声を背中で聞き流す。
イノセンスは、まだ修復から戻っていない。
――じじいに言われるまでもなく、分かってる。
だからといって、じっとしていられるわけがなかった。
赤い非常灯の下を走りながら、ティファの顔が脳裏に浮かんだ。
医療棟は、ここからそう遠くない。
無事を確かめてから戻っても、大した時間はかからないはずだ。
――一度、病室を覗いていこう。
包帯だらけで、歩くのだってやっとだ。
あいつが動けるわけない。
きっと、まだ病室にいる。
大丈夫だ。
そう自分へ言い聞かせ、ラビは医療棟へ続く通路へ進路を変えた。
――ただ、無事を確認するだけだ。
それなのに、足は勝手に速くなった。
その時、横の通路から誰かが駆けてくる。
黒い髪。
白い服。
そして――裸足。
「リナリー!?」
ラビは思わず足を止めた。
「裸足でどこ行くんさ」
リナリーはラビの姿を認めると、荒い息のまま足を止めた。
「昇降機が今どこの階にあるか知ってる?」
返事を急かす声には、隠しきれない焦りが滲んでいた。
「ヘブラスカの間に……っ」
背筋が、ぞくりとした。
何かがおかしい。
問い返そうとした、その瞬間。
「リナリー」
声が、通路の奥から響いた。
「兄さ……」
リナリーの肩が強張った。
コムイだった。
その傍には、警備班が控えていた。
眼鏡の奥の目が、ちらりとこちらへ動いた。
「ラビも一緒か」
嫌な予感がした。
「――え?」
直後、警備班に肩を掴まれ、二人は通路脇の部屋まで連れていかれた。
「なっ……! おいっ、どこへ――」
扉が開いたかと思うと、そのまま中へ押し込まれる。
「ちょっ……兄さん!?」
――ガチャン。
重い扉が閉まり、外側から鍵の落ちる音がした。
「何すんだコムイ! 出せさ!!」
扉を叩く。
分厚い鉄が、拳を跳ね返した。