第47章 【第四十二話】『私』として、ここに
「ああ。あいつがいなきゃ、オレらは戻ってこられなかった」
アレンが、皆を救った。
それなのに。
震える指で、次の言葉を書く。
『みんなを助けたのに、どうして監視されるの?』
ラビは目を伏せた。
「中央庁にとっちゃ、オレらを助けたことより、どうしてアレンが方舟を動かせたのかが問題なんだろ」
そこで言葉を切る。
「クロス元帥は、その理由を知ってると思われてる」
『だから、師匠まで?』
「……ああ」
息が苦しくなる。
アレンがなぜ方舟を動かせたのかも、師匠が何を知っているのかも分からない。
二人がその答えを握っている――中央庁はそう考えているのだ。
『二人は、どうなるの?』
書いた文字の最後が歪んだ。
ラビはすぐには答えなかった。
その沈黙だけで、安心できる答えなどないのだと分かってしまう。
「……詳しいことは、オレらにも知らされてねぇ」
低い声だった。
「でも、今すぐ何かされるって決まったわけじゃねぇ。二人とも、今はここにいる」
――ここにいる。
その言葉へ縋るように、頷いた。
それでも、ペンを握る指の震えは、しばらく止まらなかった。
答えの出ない不安を抱えたまま、療養の日々は続いていった。
病室へ足を運んでくれる人たちの存在が、張り詰めた気持ちを少しずつほどいてくれた。
リナリーは自分も満足に休めていないのに、ミランダと連れ立って何度も顔を出した。私の髪を整えたり、喉に負担のない飲み物を用意したりしてくれた。
神田は、私が目を覚ました日に皆と一緒に姿を見せて以来、病室へは来ていない。
それが神田らしいとも思っていた。
目を覚ましてから四日目の午後。
ラビが包帯を替えるため、自分の病室へ連れ戻された直後だった。
廊下から、聞き覚えのある声が響いた。
「ほら、ユーくん。ここまで来たんだから、ちゃんとお見舞いをしなさい」
穏やかで、どこか楽しそうな声。
ティエドール元帥だ。