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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第47章 【第四十二話】『私』として、ここに



私が全て書き終わるまで、隣で黙って待っていてくれた。


最後に、一番伝えたい言葉を綴る。


『でも、貴方を特別に思う気持ちは、消したくない』


ペンを持つ指が震えた。

ラビの目が、その一文の上で止まる。



長い沈黙。


やがて、ラビは繋いだ手を持ち上げた。

指先へ額を預けるように、深く俯く。


「……ほんと、お前ってさ」

声が掠れていた。

「肝心なとこだけ、真っ直ぐなんだよな」


涙で滲む目で、ラビを見る。


ラビは顔を上げた。

翠の瞳が濡れている。
それでも、笑っていた。


「オレが消させねぇよ」

「お前が“お前”でいたいって思ってるなら、何度だってオレが引っ張り戻してやるさ。その気持ちごとな」


胸の奥が熱くなった。


ラビは照れ臭そうに顔を逸らす。

「……まあ、出来れば次は自分刺す前に頼ってほしーけど」


泣きながら、ほんの少しだけ笑った。

繋がれた手を見つめる。


何度でも引っ張り戻す、と彼は言った。


――だったら、私は。

もう一度、メモ帳へ書く。


『貴方がいるから、私は私でいられる』

ラビは、その文字をしばらく見つめていた。



やがて、片手で目元を覆う。


「……それ、オレの台詞なんさ」

手を下ろしたラビの目元は、赤くなっていた。


「オレ、さ……方舟でお前と別れた後、ロードの夢に引きずり込まれたんさ」

声が低くなる。


「もう戻れねぇって、諦めかけた時……お前の声が、オレを引っ張り戻してくれた」

ペンを持つ手が止まった。


「『行ってらっしゃい』って」


「あれがなかったら、たぶん、あそこで終わってた」



――行ってらっしゃい。

それは、これまで何度も口にしてきた、ごくありふれた言葉だった。


特別な力を込めたわけではない。

ただ、無事に帰ってきてほしいと願い、伝えた言葉。


ラビは覚えていてくれた。

自分を見失いかけた夢の中で、私の声を思い出してくれた。


何かが、身体の奥から込み上げた。


歌でなくても。

『ニルヴァーナ』の力を借りなくても。



私の声は、ちゃんと彼へ届いていた。


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