第46章 【第四十一話】特別という祈り
ティファの手に握られていた光のレイピアに、大きな亀裂が走る。
一つ。
また一つ。
白銀の刃が、無数の欠片となって弾け散った。
「ニルヴァーナの構成が崩壊しています!」
ジョニーが叫ぶ。
「いや、違う!」
リーバーが計測器へ身を乗り出した。
「反応は消えてねぇ! 聖女化による均一化波形と、ティファ自身の精神波形がほどけて……別の形へ組み替わってる!」
「再構築……?」
コムイの声が、僅かに上ずった。
ティファの喉元で、銀色の光がひび割れていく。
感情を押し潰し。
誰か一人を愛しく思う心を、削り取ろうとしていた光が。
一つ。
また一つ。
砕けていく。
その奥から、これまでとは違う、柔らかな光が溢れた。
誰かの恐怖を奪おうとする圧はない。
心を均そうとする甘い強制もない。
ただ、そこに在るものを、そのまま受け止めるような光だった。
どくん。
『ニルヴァーナ』が、脈打つ。
もう、その鼓動は自分のものと区別がつかなかった。
頭の中を満たしていた声が、消える。
その人を手放せばいい。
誰か一人を求めるから、苦しくなる。
全てを等しく愛せば、もう痛まない。
そんな言葉は、もう聞こえない。
残っているのは、脇腹を貫く激しい痛み。
怖いという感情。
アレンたちの声。
そして、ラビを失いたくないという、どうしようもなく強い願いだった。
「……ラビ……」
痛む喉で、その名を呼ぶ。
ラビの腕が震えた。
ティファは、ゆっくり顔を上げる。
ラビの頬にも血が飛んでいた。
肩にも腕にも、白銀の光に裂かれた傷がある。
怒っていて。
泣きそうなほど顔を歪めていて。
それでも、ちゃんと自分を見ている。
「……ちゃんと……見える……」
ティファは、震える唇で笑おうとした。
「貴方が……」
ラビの顔が、ぐしゃりと歪んだ。
「……っ、バカ」
額が、ティファの肩へ落ちる。
「何で……自分刺してんだよ……っ!」
ティファは、震える指でラビの団服を掴んだ。
「だって……」
息をするたび、脇腹へ激痛が走った。